お出かけ前線
春来れり、お出かけ前線北上中、である。ちなみにこのお出かけ前線、今この瞬間も日本列島の上を南北にものすごい速度で往復しており、視認はできない。特にこれを読んでいるあなた方のように、人とのまじわりを絶ち社会性を涵養せず夢も希望もこれといった未来絵図も持たず父を罵り母を足蹴にし妻を娶らず子をもうけず天に唾し地に歯向かう引きこもり型のダメダメ人間には決して……………。
3月8日、知人数名と将棋会館を見に行く。「見に行く」といっても、見るもんなんかなんもないよねと笑っていたら、着いて早々、会館から現将棋連盟会長・佐藤康光九段がすたすた出てきてわれわれは俄に色めきたつ。A級残留おめでとうございます、いろいろご苦労も多いでしょうが頑張ってください、と声をかけることまではしなかったが。
会館すぐ横の鳩森神社にお参りし、会館の売店をのぞき、千駄ヶ谷のルノワールですこし将棋を指して、新宿で酒。
3月10日。乃木坂駅に用事ができてしまって、とんぼ返りもつまらないので新国立美術館でミュシャ展。さいきんの美術展は規制も徐々にゆるくなっているようで、写真を撮らせてくれる一室が設けられていた。展示する側もそりゃまあ大変だろうが、見る側としては、喋るな、撮るな、よりはよっぽど楽しく見られる。
正直いうと、ミュシャというと出てくる美人画のポスターにはあまり興味がないのだが、しかしやはり『スラブ叙事詩』と銘打たれた連作にはそれなりに圧倒され、「絵がでかいし絵がうまい」という印象を抱いて帰路についた。